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大森 美香(人間文化創成科学研究科研究院 基幹部門 人間科学系 准教授)
テーマの「授業の経験や工夫、日常的な授業への取り組み」について改めて文字にすることは、私にとっては、これらを十分に行っていない自己の問題に直面することでもありました。このエッセイを書くこと自体、そうした自身の日ごろを振り返る作業なのだと受けとめ、授業で試してみたことなどを書いてみたいと思います。
このエッセイ執筆のきっかけとなった「臨床心理学特殊講義」は、ストレスや対処行動、健康関連行動、健康行動に関連する認知や感情といった個人差要因について、基本的な理論や最近の知見について学ぶことを目指した授業です。心理学専攻が中心の30人程度の授業であり、受講者の数や背景知識の点で感触をつかみやすく、非常に構成しやすい授業だったというのが正直な感想です。手ごろな人数だったこともあり、この授業では、グループによるピアティーチングを試みました。数人のグループでのいわばミニティーチングであり、担当グループは、プレゼンテーションに加えてクラスの理解や討論を促すためのアクティビティを用意することが課されます。実際のプレゼンテーションには、どのグループも教員顔負けの発表スライドを作成して臨んでおり、発表ぶりもなかなか堂々としたもの、学生の持つ力に感嘆させられました。学生が授業内容をプレゼンテーションし、アクティビティを行うことで、討論しやすい雰囲気づくりはできたのではないか、と感じています。
こうしたピアティーチングの試みといい、どうも授業を相互作用的なものにしなければならない強迫観念があるようです。大学院生の頃、学費をファイナンスするために英会話のインストラクターをしていたことがあります(今にして思えば、もっと心理学の研究に専心すべきでした……)。レッスンの課題は、発話を引き出し、既に獲得されている語彙やグラマーを活性化すること。集団の力動を利用しながら、誰もが同等に参加し会話が練習できるアクティビティを考案することが求められます。また、私が受けてきた大学院の授業の多くは、事前に読む資料にもとづくディスカッションが主体であり、グループでの発表やリサーチプロジェクト、授業内のアクティビティのような活動によって、受講生と教員、受講生間の相互のやりとりが促されているものであったと記憶しています。
結局のところ、自分の授業スタイルは、これらをモデルに試行錯誤している段階です。集団の力動を利用して学生の相互学習を促せるような授業、学部の小規模な授業ではこのようなことができればと思案しているところです。
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