現場感が伝わる実習にしたい
平田 亜古(人間文化創成科学研究科研究院 基幹部門 自然・応用科学系 准教授)
今回のFDエッセイの依頼をお受けしたものの、これといったことをしているわけではないのですが、現状をご紹介いたします。
食物栄養学科は管理栄養士養成施設に改組され、今年度が完成年度にあたります。私が担当する3年次の「集団給食管理実習」は、4年次に学外で行われる病院や保健所での管理栄養士臨地実習及び管理栄養士が活動する現場を想定した体験学習です。
管理栄養士業務は患者のベッドサイドに出向いて診て触れ、他職種と連携して個別栄養改善をすることです。知識・技術だけではなく協調性やリーダーシップ、連携能力も求められます。が、入学までは学生は給食を食べる側にあり、大方は医療関係の管理栄養士に接したことはなく、給食業務(病院食の献立作成や調理作業)が主な仕事と誤った認識をしているのが実情です。ですから管理栄養士を実感し、その専門性や役割、マナーを習得してもらうのが実習の目標です。
管理栄養士の業務は、栄養アセスメント、献立作成、調理、衛生管理、栄養教育、評価、等の一連のものなので、実習の最初にこれまで履修してきた科目をおさらいし、関連づけることから始めます。もちろん学生自身が実践しなければこの実習は成り立たちませんので、学生が管理栄養士役になりグループで一連の計画・実施・評価までを行います。その際、可能な限り手を出さず見守り、学生の意志決定に多少無理がであっても、衛生安全上問題がない場合には、おいしく、楽しく食べることを優先し実施します。そして、最後の評価の授業で、無理な工程や問題のあった部分をどうしたらいいかを体験から考察し発表しています。また、学内では現場の再現は難しいので、臨地実習や現場で学生が困惑しないよう、マナーや衛生管理、治療用特殊食品等の栄養補給法に焦点を絞っています。どうしても現場の臨場感や空気感、緊張感は伝えられません。そこで、病院で活躍している管理栄養士に社会的使命も含めて特別講義をしていただきました。そうは思っていても、己の未熟さゆえになかなか上手くいかないのが常です。
こうしてFD評価が高くなった理由を改めてふりかえってみますと、学ぶ環境の中で管理栄養士の1期生を出すという教育側と、学生自身の私たちは1期生なのだという自覚により、現場に近い私の実習で動機付けが高くなったのも一因かもしれません。
もうすぐ1期生が卒業していきます。お茶大の管理栄養士1期生が社会でどのように活躍してくれるのか、不安と期待が入り混じっています。
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