プロジェクト

幼児教育分野におけるアジアの途上国の実態調査とネットワーク形成


6 講演会 「ベトナムにおける幼保一元化の取組み」 質疑応答

本講演会では、以下の項目について、質疑応答がなされた。

質問1)
確認だが、ベトナムの幼保園では、1歳〜3歳が保育園、3歳〜5歳が幼稚園と理解していいか?
回答)
その通り。

質問2)
2−1社会主義国なので(有無が)よくわからないのだが、保育料はどれくらいになるのか?
2−2保育料がある/高いことが、3歳以下の就園率の低さと関連しているのか?
2−3また幼保園では保育のみ行われているのか?それとも教育的なカリキュラムがあるのか?幼稚園教育との関連はあるか?
回答)
2−1:保育料は通常の幼稚園の料金よりも高い。施設維持費は国が負担している。
2−2:ベトナムでは3〜4世代同居が多いため、祖父母や兄弟などが3歳まで家で面倒を見ていることが就園率の低さと関連しているのではないか?高所得者層はベビーシッターを使っている。また、地域にある個人経営の安価な保育所があるので、それがあればそこに入れる親もいる。確かに幼保統合施設の保育料は高いが、料金だけが就園率の低さの原因ではないと思われる。たとえば、幼保統合施設は親による送迎が必要なので、その負担感から選択されないこともあると思う。
2−3:0〜3歳まではケアと遊びが中心の保育である。造形や音楽など遊びを通した学習を狙っている。3〜6歳では遊ぶ中での学習に力点が移る。お店屋さんごっこや床屋さんごっこなど。それらの遊びを通して、世界・動物・家族・交通ルール・言語発達・自然と触れ合うこと・チャレンジ精神を養うことなどがねらわれている。
また遊びは先生中心のものもあれば、子どもの自発的なものもある。
理念としては、人間性のある人を育てる、という目標のもと、遊びを通した勉強/勉強を通した遊びを行っているが、どうしても先生中心の勉強・遊びが多くなっている。
また、日本の園に比べると、先生が多めであるとも思う。

質問3)
遊び<教育(知識の押し付け)となっているベトナムの状況では、JICAの援助が入っても日本の「子ども中心の幼児教育」が浸透しない。たとえば、ベトナムでは市販の玩具を用いていることが多いが、日本的な子どもが自分で手作りするような玩具を作らせるようなこと、それで遊ばせるようなことが浸透しない。このような現状についてどう思うか?
回答)
●子ども中心の思想を保育者養成教育の中で理論的に教えても、現場でそうすることができない。父母や学校の体制もそちらの方向に向かず拒否されがちである。日本の現状や旧ソ連からの学びをもとに、実現に向けて努力したい。
●日本の施設で視察した、砂遊び、水遊びなどぜひ取り入れたい。
●古紙や新聞紙などを用いた工作とそれによる遊びの実践はベトナムの中でも行われているが、広げていく努力が必要だろう。

質問4)質問2の回答で話にあった、個人経営の保育所(託児所)とは?
回答)
●"Family-Children-Group"と呼ばれるもので、地域の中で、退職者などが働く女性を支援する形で託児をする施設がある。行政からの支援を受けず、個人が自発的にはじめたものが多く、内容は子どものケアが中心の内容。
●運営者が保育者を雇用していることもあるし、行政にコネがあれば、資金援助をもらっている場合もある。


質問5)
幼保園の制度をもう少し詳しく説明して欲しい
回答)
●3歳未満は保育所に入る。1歳代は数ヶ月ごとにクラスが分かれ、2歳代は1つのクラスとなる。
●3歳以降は幼稚園となり、年齢ごとに1つのクラスである。北越では3歳児クラスを「子ども組」、4歳児クラスを「やや子ども組」、5歳児クラスを「もう大人組」と呼び、南越では、3歳:つぼみ組、4歳:つぼみと満開の間組、5歳:花組と読んだりする。
●幼保統合施設に入れるのは、生後18ヶ月以降。それ以前に前述の個人経営の託児所に入れる場合は、そのままそこに通っていることも多い。
●職場から産休を取っている人は、生後3ヶ月から預けられる。

質問6)
保育者の資格は国家資格か?保育の基準は?
回答)
●国家資格はない。
●教育は中級学校・高等学校・大学と分かれており、それぞれ高卒後の教育年数が2年・3年4年と分かれている。
●保育の基準は、教師1人当たり保育所なら3名で、3名のうち2人が子どものケアと学習、1人が食事や排泄などのケアを行う。
●幼稚園の場合は、1クラス4〜50(たまに60という場合もある)人に2名の保育者が置かれている。
●いずれにしても、これらについての国家基準はない。

質問7)
あえて、保育料の高い幼保園に子どもを通わせる人とはどんな人なのか?
回答)
●高いから幼保園に通わせる/通わせないという選択が生じているわけではない。普通の収入で入れている人も多くいる。
●送迎の問題や、祖父母の意見、自宅からの近さ、親の教育方針などによって通わせるかどうかが決まっているようだ。
●市場経済化してから、“上流学校”とも言うべき園もハノイやホーチミンには出てきている。それらの学校は国際的な教育プログラムを持ち、ヨーロッパのカリキュラムを導入して英才教育を行っている。たとえば、0歳からクラシックやピアノの教育などを行っている。





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