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2010年4月6日更新
ご入学おめでとうございます。
皆様をこの大学にお迎えすることを大変うれしく思います。そして、新入生のご家族の皆様、ご関係の皆様にご入学を心からお慶び申し上げます。また、本日ご臨席いただきましたご来賓の皆様に深く感謝申し上げます。
お茶の水女子大学は、今から135年前、明治8年(1875年)に、日本最初の女性のための高等教育機関、東京女子師範学校として国によって設立された 最も伝統のある国立の女子大学です。設立当時は、「お茶の水」の地にありましたが、その建物が関東大震災で焼失し、その後、現在の大塚の地に移り、昭和11年(1936年)、今から74年前にこの本館が建てられました。この建物は国の登録有形文化財に登録されておりますが、建物の外壁は「スクラッチタイ ル」といわれる特殊なタイルで創られていて、当時の建築の特徴を示しています。また、この建物正面玄関には大理石が敷かれていますが、この大理石はヴェル サイユ宮殿に使われているのと「同じ」ように質の高いものとも伝えられています。このことに象徴されるのは、当時、この大学への期待がいかに高く、またそ の存在意義がいかに重要視されていたか、ということです。
東京女子師範学校は、女性が高等教育を受け、教員として経済的に自立することを、そして、日本の教育水準の向上に寄与することを目的に設立されました。
今日のお茶の水女子大学の使命は、女性が社会的に自立できる力を養成することはもちろんですが、女性の社会的活躍によって、日本社会の活性化を促し、日本の科学と文化をその特性のままに世界に発信し、国際社会に学術的に貢献することにあるといえましょう。
先日、dafabet官网_dafabet手机版-购彩网重点推荐評価のランキングが報道されましたが、お茶の水女子大学は全国86の国立大学の中で第5位と高く評価されました。この評価は、おもに教育、研究、社会貢献、業務運営についての活動の評価ですが、教育、研究については特に高い評価を受けました。
ランキングは相対的なものであり、どちらかといえば量的な判断ですし、それに対して、教育や研究の水準や成果はそのようにしては測りえないものであり、 また、短期的に判断できるものでないこともまた真実です。しかし今回の高い評価は、お茶の水女子大学の創設以来の教育と研究の実績への評価であるといって よいと思います。高い評価を得たこの教育と研究の基盤は、その能力に秀でた教員と、極めて優秀な学生による「類まれな」教育の実践にあります。
「類まれ」といいますのは、ひとつは、学生の個性と能力を尊重し、少数精鋭の教育を行っていることです。本学ではほとんどの授業が少人数で行われます。 したがって、授業中の発言の機会は当然のことながら多くありますし、他人の考え方、自分と異なったものの見方に接する機会も多く、その過程で学問的専門的 なコミュニケーションの能力が鍛えられます。
また、学部は三学部ありますが、それぞれの学部の先生方の多くが顔見知りという大学も珍しいといわれています。したがって、おのずから三つの学部を隔て る壁は低く、多様な学問に親しむことが可能な教育プログラムも組まれています。つまり、主たる専門を深化させながら、同時に、専門領域を超えて課題を探究 する領域横断的な視点を身につけることができるのも、この大学の教育に特徴的な点です。深い専門性は広い視野をもつことによってはじめて可能になる、とい えます。
つまりこの大学は、学生同士、学生と教員、そして教員相互の分野を超えたコミュニケーションが日常的に行われ、その中で一人ひとりがお互いに切磋琢磨し、専門性を身につけ人として成長できる環境なのです。
お茶の水女子大学のこうした環境の中で皆様が存分にその持てる能力を磨かれますよう期待しています。
大学での学びがこれまでと大きく異なる点は、正解がないこと、そればかりでなく、問題すら自ら発見し、解決の方法を試み、検証し、新たな理論を創り出す ことが求められる、ということです。そこでは、問いを立てる個々人の独創性と新たなものを創り出す創造力が求められます。ですが、そのためには確かな知識 を習得しておくことが大切です。そうでないと、主張は独断的になり学問ではなく単なる教説になりかねないからです。
「知は力である」というフランシス?ベーコンの言葉があります。「人の知とその力は同じものである」ともいわれますが、これは対象をよく観察し吟味し知 ることによって、法則を見出し、変化を予測する力を得るという学問のあり方を示しているということができるでしょう。私たちは、高い見識をもった人を育て ることを使命と考えていますが、高い見識をもつ人とは、学び、観察し、「知」を身につけることによって、問題を発見し、吟味し、判断し、新たな知を創造す る「力」を備えた人を意味します。「知」を「力」となすために、皆様はこの大学でそれぞれの関心の赴くまま、多くの「知」を身につけ、勇気をもって自らの 可能性を試し、新しい分野を切り拓く「力」を獲得してください。
今日お渡ししている資料の中に、「みがかずば」というリーフレットが入っていますが、「みがかずば」とは、
みがかずば たまもかがみもなにかせん
学びの道も かくこそありけれ
という校歌に因んだものです。これは日本で最も古い校歌といわれていますが、この校歌にあるように、皆様が学生時代に自らの知を磨き、自信と勇気をもっ て社会に巣立つための力を学生生活の間に獲得していただきたいという思いをメッセージとして作成したものです。学生生活は社会に向かう一つの大切なプロセスと考えて、失敗を恐れず、勇気をもって自らの可能性を試してみてください。
「お茶大に来て本当に良かった」という学生の声をよく聞きますが、皆様もこの大学で充実した学生生活を過ごし、そして4年後には多くの力を身につけて、この講堂、「徽音堂」から社会へと巣立って行かれることを期待しています。
「徽音」とは、美しい音、よい言葉、尊い教えや徳を意味します。70年以上にわたって入学式と卒業式が行われたここは、いわば大学時代の原点となるよう な空間です。大学生活を、今、この場から始め、かけがえのない時を共に刻み、一人ひとりの歴史と、そして、大学の歴史を豊かに刻んでまいりましょう。
「知は力である」。これからの四年間に得る「知」が学問を拓く「力」となり、皆様の未来へ向けての「力」となることを確信しています。
ご入学をお祝い申し上げ、皆様を心から歓迎いたします。