生活世界の安全保障 4 平和と暴力 : 小林 誠[文教育学部グローバル文化学環] |
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LA科目をスタートして |
自分の回りの狭い生活の私的な領域に、関心を閉じ込める傾向が大学生に強まっていると言われることがあります。グローバル化の時代と呼ばれて、国境を越えたさまざまな社会関係が増大しているのに、自分の生き方を内向きにしかイメージできないとすると、これからの生き方の指針をうまく構想することができません。
この科目では、自分のあり方、これからの生き方を世界の中に置き直して考えてみることを試みます。ここで言う世界とは、文字通りの世界各地域、世界に住む人々のことです。そうすると現代世界には、戦争や大規模人権侵害、著しい経済の格差、差別や排除などの著しい暴力が広がっていることにまず気づくでしょう。他方でそれらを克服しようとする平和への努力がさまざまに行われてきたことも事実です。
平和と暴力の問題を、改めて現代世界の中での自分のあり方と絡めて考え直してみたいと思います。 |
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学生に学んでほしいこと、伝えたいこと |
それぞれの専門を学ぶ上でのバックボーンになるような、幅広い世界観みたいなものです。人間の営みを、暴力に抗して平和を築き上げるという側面からとらえ直すということです。また、平和であることの意味を深く考え直してほしいです。
多くの受講生は自分の生活が平和だととらえているようです。でも、仮に日本が平和であるとしても、もし世界が戦争や飢餓に満ちていて、日本の平和がその裏返しであるならば、それは大問題だといわねばなりません。もっとも、日本の平和だっであやういのですが。
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何に役立ててほしいか? |
大学を出た後、それぞれ様々な社会生活をしますよね。その時に、自分の生き方の問題として、平和というものを大切にし、意識することができるようになるといいなと思っています。
日常の生活でいろいろな脅威や危険に直面するでしょうが、それが世界規模で構成される暴力の一部だと考える発想を身につけることで、平和の構築に何らかの意味で役立てることができるかもしれません。世界から戦争、貧困、差別はいつまでたってもなくなりそうにないですが、それを自分の生活とは別の遠い問題とはとらえず、自分たちが解決すべき問題だと考えるということです。
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学生へのメッセージ |
与えられた思考の枠組みを相対化してながめてみること。目の前にある問題の解法を見つけようとするだけでなく、ときには、どうしてその問題が出てきたのか、どうして解かないといけないのか、などと批判的に考えてみてください。 |
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取材(文・写真):教育企画チーム 野口香織 |