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2017年12月6日更新
アフガニスタン女子教育支援15周年記念公開シンポジウム「アフガニスタン女子教育:支援の歩みと現状」が、創立記念日である11月29日(水曜日)、本学で開催されました。
お茶の水女子大学は、2002年に津田塾大学、東京女子大学、奈良女子大学、日本女子大学とともに「五女子大学コンソーシアム」を形成し、共にアフガニスタンの女子教育の支援に取り組んできました。今年はコンソーシアム結成15年目にあたることから、同シンポジウムを開催する運びとなりました。シンポジウムは、200名を超える参加者を得て、盛大に執り行われました。
最初に、室伏きみ子学長による開会挨拶の後、来賓からご挨拶をいただきました。バシール?モハバット駐日アフガニスタン?イスラム共和国特命全権大使からは、過去15年間にアフガニスタンの教育分野で大きな進展が見られたことについて報告があり、日本政府及び五女子大学コンソーシアムからの支援に対する謝意が表されました。次いで、アフガニスタン女子教育支援が開始された当時の文部科学大臣で、本学名誉博士でもある遠山敦子氏から寄せられたメッセージが読み上げられました。ご列席の池原充洋文部科学省大臣官房文部科学戦略官、萱島信子独立行政法人国際協力機構JICA研究所副所長からも五女子大学によるアフガニスタン女子教育支援の取組への評価と感謝が述べられました。また、共に支援に取り組んだ女子大学からは、髙橋裕子津田塾大学学長、小野祥子東京女子大学学長、今岡春樹奈良女子大学学長、大場昌子日本女子大学学長代行にご出席いただくことができ、当時のご苦労、さらにはその後の各大学の取組等についてお話を伺うことができました。
基調講演は、井上正幸公益財団法人日本国際教育支援協会理事長?元文部科学省国際統括官が「『山と山は歩み寄らないが人と人は歩み寄れる』~アフガニスタン女子教育支援と平和達成への尽力~」と題してお話しされました。井上氏は、アフガニスタン復興支援の事の起こりについてご自身の経験されたエピソードを交えながらお話しされ、その中にあって五女子大学が迅速にコンソーシアムを立ち上げ結束して対応したことを高く評価されました。故事を引用し、アフガニスタンには教育の発展への土壌があることを指摘され、教育は国の未来を創るものであるとして、五女子大学コンソーシアムの今後への期待が語られました。
続いて、髙橋博史外務省参与?大使、前駐アフガニスタン?イスラム共和国特命全権大使による「男女7才にして席を同じゅうせず~アフガン社会における女子教育の現状と提言~」と題した特別講演が行われました。髙橋氏は、アフガニスタンは伝統を重んじる保守的社会であると分析し、アマヌッラー国王の治世における急速な近代化の失敗等を事例として紹介され、社会変革は現地社会の文化と実情に合わせて適切に行われなければならないと警鐘を鳴らされました。その上で、保守的な社会の中にあっても女子教育の重要性に理解を持つ人も多いことから、和魂洋才の考えに倣い、アフガニスタン古来の精神や慣習を維持しつつも、同国における女子大学創設の意義に触れ、宗教界を巻き込みながら慎重に検討すべきことが提言されました。
アフガニスタンからの女子留学生によるプレゼンテーションや卒業生からのビデオ?メッセージでは、アフガニスタンの基礎教育、高等教育の現状についての最新の情報が報告されました。
アフガニスタン女子留学生は、2001年以降、アフガニスタンでは就学率の向上など基礎?高等教育分野で大幅な進展が見られた一方、治安の悪化、経済?文化的理由、女子学校?教員の不足等の課題も多くあり、同国の女子教育を取り巻く環境が依然として厳しいことを訴えかけました。一方、卒業生のビデオ?メッセージでは、卒業生の多くが、学位取得後、母国に戻り後進の育成のために大学等で教鞭を取っている様子を見ることができました。
室伏きみ子学長からは、「アフガニスタン女子教育支援の15年間」と題して、五女子大学コンソーシアムが文部科学省、JICA等からの支援を受けながら、日本の女子教育の歴史と経験を踏まえつつ、アフガニスタンの指導的女子教育者研修?女性教員研修等を長きに渡って実施してきたこと、また、大学としても、留学生の受け入れ、「アフガニスタン?開発途上国女子教育支援事業野々山基金」を通じたアフガニスタン女性教員?学生短期研修、教材開発、NGOを通じた図書館?絵本支援事業、講演会?シンポジウム等を行ってきたことが報告されました。「学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する」との本学のモットーに基づき、アフガニスタンのことを忘れていない、女子教育の復興と発展を支えたいとの決意が語られました。
最後に、広瀬晴子理事が閉会挨拶を行いました。多くの参加者と共にアフガニスタン女子教育支援の取組を振り返りつつ、本シンポジウムが、同分野における課題や今後の展望について多角的な観点から考える機会になったと総括し、シンポジウムは盛況の内に終了しました。