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2022年1月31日更新
北海道大学大学院理学研究院の佐藤長緒准教授,お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科の植村知博准教授,東京都医学総合研究所の佐伯 泰プロジェクトリーダー及び田中啓二理事長,立命館大学生命科学部の深尾陽一朗教授らの研究グループは,スウェーデン農業科学大学のリシケシュ?P?ベールラオ教授,理化学研究所光量子工学研究センターの中野明彦チームリーダーらとの国際共同研究で,SNAREタンパク質SYP61による細胞内物質輸送の制御が,植物の栄養バランス異常に対する適応機構において重要な役割を担うことを発見しました。
我々ヒトと同様に,栄養バランスの乱れは様々なかたちで植物の成長に悪影響を及ぼします。特に,代謝の根幹を担う糖(炭素源,C)と窒素(N)のバランスは重要で,C/Nバランスの乱れは発芽阻害や葉の老化促進,バイオマス及び種子収量の低下に繋がることが知られています。しかし,こうしたC/Nバランス異常への適応メカニズムはほとんどわかっていませんでした。
今回,研究グループは,細胞内物質輸送制御因子であるSNAREタンパク質SYP61が植物のC/Nバランス異常(C/Nストレス)耐性付与に重要な役割を果たすことを明らかにしました。さらに,SYP61の機能がユビキチン化という翻訳後修飾によって制御されている可能性を示しました。SNAREタンパク質は,真核生物に保存された細胞内の物質運搬システム「膜交通」の制御因子で,細胞内物流の交通整理役を担っており,動植物を問わず,その機能制御機構の解明が待たれています。 本研究成果は,膜交通系の新たな機能を提案すると同時に,不安定な栄養環境において十分な収量を得られる作物の作出への応用が期待されます。
本研究成果は,2022年1月28日(金),The Plant Cell誌にオンライン掲載されました。
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膜交通制御因子SYP61を介した植物の栄養バランス応答機構の仮説