プロジェクト

幼児教育分野におけるアジアの途上国の実態調査とネットワーク形成


研究の目的

1) 国際社会は「万人のための教育」(ダカール行動枠組み)達成を目指し、教育分野における途上国への支援体制を強化している。特に幼児教育分野への支援は、小学校以降の高いレベルの学校教育を可能にし、その結果大きな経済効果をもたらすことが報告されていることから(世界銀行, 2001)、途上国開発支援における世界的な関心の高まりが見られる。

2) しかしながら、日本においては、幼児教育分野における支援は「経験が浅い分野」として位置づけられている。その理由として、基礎となる開発途上国の幼児教育の実態やニーズについてのデータの不足が挙げられる。UNICEFや各途上国政府による公式資料は実態と異なることが多く、実態に即した体系的な調査データは、これまでのところ皆無である。

3) 以上より、本研究では、幼児教育分野における途上国支援の基盤を形成するため、基礎的データを収集・体系化し、国内外のネットワークの中での共有化を図る。

本年度(〜平成19年3月31日)の研究実施計画

1. 幼児教育の実態とニーズに関する調査
 平成16・17年度は、開発途上国の幼児教育について、各国政府の施策と方針、予算措置、所轄機関、教員養成システム、幼児教育施設における保育内容と方法、地方や貧困層の子どものおかれた医療・栄養・保育状況、国際機関による支援状況などに注目して調査を行ってきた。本研究においては、一方ではアジアの幼児教育の実態について幅広く、できるだけ多くの国々についての情報を収集するとともに、特定の国についてはより深く、詳細な調査を行っている。前年度は、ベトナムに関して、教員養成施設の調査や少数民族が多いイエンバイ省における幼児へのケアと教育の実態調査を行った。今年度も引き続きベトナムにおける調査を継続させるとともに、現地の教員養成校の教官3名程度を日本に招聘し、日越間での相互理解を深める。また、今年度はこれまでにまだ調査がされていない国(インド、パキスタン、ラオス、バングラデシュなど)についても基礎データの収集を行い、これまでに調査された国も含め、国際比較の観点から情報を整理する。
2. 途上国幼児教育支援のネットワークの構築
 これまでの実績から、国際機関、JICA、NGOとのネットワークが形成されてきた。本年度は、国内外のネットワークをさらに強化し、国際協力の現場の視点と大学の幼児教育研究者の視点を交えて、各国の情報を共有し、日本の途上国支援に向けた中長期的な展望と戦略を検討する。
3. 大学による途上国の幼児教育支援モデルの提示
 本年度は最終年度であることから、これまでのファインディングス、知見を集約し、日本の幼児教育支援に対して政策的な提言を行うとともに、大学が日本の幼児教育の知見と経験を途上国支援にどう有効に生かすか、教育行政官や現職者の研修受入れや本学教官による現地講習といったソフト面での支援協力がどのような形で可能か支援モデルを検討する。

活動報告

ここではプロジェクトの活動状況を随時ご報告します。